犬と暮らしには、『出会いと別れ』がつきものです。
こればかりは望む望まないに関わらず必ずいつかは訪れます。
私の場合は本当にありがたいことに、仔犬の頃から最後の旅立ちまで関わらせて頂くことも
多々あり、その度に色々と考える機会を頂けています。
特に病気や老齢期における飼い主さんの介護の姿を見ると、
『あんなことやこんなことを練習していて本当に良かった』
と感じることは数多くあります。
今回はそんな場面から感じたことをお話ししますね。
幼少期から様々なしつけに取り組んでいる犬と、そのようなことをしたことがない犬との違いを
ひしひしと感じます。
例えば『大人しく病院で診察されることができる』。
これだけでも大いに違います。
暴れて咬んでという状態で飼い主さんですら自分の犬を扱えない・・・こんなケースも動物病院では珍しい話ではありません。
(こうなると当然ながら詳細な診察やケアができません)
そうならないためにも仔犬の頃から病院を大好きになる機会(病院でのパピークラスなど)を利用するのも一つですし、身体を人(飼い主や他人)に扱われることに慣らす練習も大切です。
知人に抱っこをして貰ったり、なでられながらフードを与えるだけでも良い練習になります。
①クレート・ハウストレーニング
クレートやハウスで休めるように練習しておくと、病中病後に安静にする必要がある時に
落ち着いて過ごさせることができます。
犬がハウスの中を安全だと感じられるようになれば、慣れない場所へ行く際に
ハウスへ入れることでストレスの軽減にもなります。
また、介護の観点から見ますと最近では犬用の『在宅酸素室』といったものもあります。
レンタルしている会社や病院もあるようで、自宅でも簡単に使用できるようですね。
病状によってはこのようなものを使用してあげることで愛犬の辛さを軽減することも可能です。
このような補助道具もハウストレーニングができているからこそ活用できるものですね。
②ボディコントロール
犬の身体を自由に扱えるようになるための練習のことです。
・抱っこで暴れない練習や取らせたい姿勢(座る、ふせる、立つ)のままでじっとする練習
・身体の各パーツに触れる練習(耳・肢先・爪・お腹・顔・口・歯…)
・関節の曲げ伸ばしの練習(前足・後足を上下・前後に曲げ伸ばしする)
これらを大人しくさせてくれるようにしつけると、手入れ時、診察時、投薬時、介護時に非常に役立ちます。
他人に身を任せることが難しい犬でも、せめて飼い主さんくらいは身体を自由に扱えるように日頃から練習しておきましょう。
また、すでに他人に対して受け入れがたい性格の犬や生まれながらに非常に臆病でシャイな犬の場合は
口輪(マズル)の練習も検討すべきです。
口輪と聞くと「まるでうちの犬が悪い犬だと周りに言っているようで嫌だ」「つけている姿がかわいそうだ・・・」こう言われる方もおられます。
ですが私は全くそういう風に思いません。
事前に口輪を装着しておけば双方の安全の確保もできますし、
なによりも苦手な診察時間の短縮になります。
犬によっては口輪を着けるだけで気持ちが落ち着く(諦めがつく)ケースもあります。
周りの目や飼い主の一時の感情よりも、
『結果的にプラスに働くのはどちらか?』
を優先として考えるべきだと思います。
③衣服の装着に慣らしておく
例えば後足が弱り歩行が困難になったとします。
こんな時に手さげバッグのような持ち手のついた補助具を使うことで散歩へ
連れて行くこともできます。
衣服の着用に慣れている犬であれば使用が容易です。
(お散歩が大好きな犬から散歩を奪うのは本当に酷ですよね。)
他にも包帯やテーピング、エリザベスカラーの装着などにも有効に働きます。
あらかじめ『道具や行為に慣らしてあげること』が大切ですね。
こういった練習は飼い主と愛犬との信頼関係を築く上でも非常に重要だと思います。
愛情を注ぎ、大切に思う気持ちが相手に伝わらないのは残念ですしね。
異種族でありながら人と暮らしている犬達にとって、最後まで人の愛情を感じて欲しいと願うのは犬を大切に思う飼い主さん全ての気持ちのはずです。
いつかは必ず訪れる別れ。
何が起きても大丈夫なよう簡単な事からさっそく始めましょう!
PS
近年、犬の飼育頭数を猫が上回るという記事がありましたね。その理由が、『飼育費用』、『散歩などの手間』、『高齢化』などが理由だそうです。
こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、個人的には良い傾向だと思っています。
当り前のことですが犬を飼うという事はお金のみならずしつけや散歩の手間もかかります。ある意味犬中心の生活になる覚悟が必要です。
ですから、
それらを理由に犬は飼いたくない(飼えないかもしれない)と思う方は
犬を飼わないのがベストだと思います。
その方が不幸な飼い主と不幸な犬が減るでしょうからね。
ペットショップで「散歩へはほとんど行かなくても良いから飼いやすい」などと言われて飼ったというストレスを抱えた小型犬や、仔犬の可愛い部分ばかりを取り上げたり、犬をおもちゃにして笑いを取ったりするメディア・・・つくづく残念な気持ちになります。
命の大切さや殺処分ゼロをうたうのならば、
『もっと根底から変えるべきでは?』
そう思うのはきっと私だけではないはずです。
ですからこういった問題は何も知らずに飼った飼い主だけを責めるべきではないと思います。
(もちろんあらかじめ飼う前に勉強すべきですが・・・)
情報を発信する側の問題も大いにあるはずです。
かけがえのない時間を共にする為に犬と一緒に暮らすのですから、
いい加減もう少し真面目に考えられないのだろうか・・・などと思う今日この頃です(*_*;
代表 ジョニー
ドッグトレーニング専門施設「フィールファン」代表 ドッグトレーナー。
犬の内面や行動などを理解し心理的な部分からの問題の改善、飼い主さまと愛犬とのあいだに良き信頼関係を築くことに強いこだわりを持つ。
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